近畿地区図書館学科協議会とは

概要

近畿地方2府5県(三重県を含む)で図書館学教育を行っている、大学、大学院、短期大学の図書館学担当教員が組織する連絡協議会。加盟校は主として司書課程あるいは司書教諭課程設置校であるが、資格付与を目的としない大学もわずかながら含まれる。活動内容は、図書館学教育に関するさまざまな情報交換、図書館学教育のあり方についての問題提起と討議、授業内容・方法に関する実践報告と研究発表、担当教員間の親睦を図ること、等である。

始まりと開催頻度

歴史は古く、1954年(昭和29年)4月に第1回協議会が開かれた。その後第22回(1970年)までは年1~3回開かれていたが、第23回(1971年)より年1回開催されるようになった。

組織と開催主体

会長や事務局は置いていない。参加校が持ち回りで当番校を引き受け協議会開催の労をとる。規約は1968年(昭和43年)に制定された。年会費などは集めず、協議会開催ごとに参加費を徴収する形をとっている。

参加メンバー

各大学の図書館学担当専任教員が中心であるが、非常勤講師の参加も少なくない。参加人数は、毎回およそ30名程度である。

近畿地区図書館学科協議会規約

近畿地区図書館学科協議会について

近畿地区図書館学科協議会(以下、協議会)については、私が1975年に同志社大学の文学部専任講師に採用されたとき、この名称の協議会があるのを先輩で同僚の青木次彦氏(当時は文学部助教授)より教わった。学科という名称に若干の違和感を覚えたことであったが、その年の12月に青木氏の後ろについて遠慮がちに(第27回の)協議会に初めて出席した。

当時の協議会の主要メンバーは、小野則秋、小倉親雄、岩猿敏生、西藤寿太郎、戸沢信義、山下栄、仙田正雄、高橋重臣、といった怱々たる先生方の顔触れで、森耕一、石塚栄二、埜上衛、尾原淳夫の各氏、それに当時は若手の塩見昇氏といった論客も揃っていた。申すまでもなく、協議会での発言・協議内容は、当時の図書館学司書課程における多くの課題と方向性を示唆する次元の高いものであった。したがって、筆者ごときが限られた紙面で論じることは至難の業であり、短い聞き書き程度でお許しいただき、ご参考の一助としたい。なお、詳細な協議会記録については、吉田暁史氏の編集による「過去の開催記録」をご参照いただきたい。

拙稿執筆に際し、武内隆恭、吉田暁史両氏から有用な資料の提供を受けたことをまず御礼申し上げたい。それらの資料をもとに、過去の経緯に言及すると、1950年4月に「図書館法」が制定されるに及び、司書講習の開講とそれに伴い、全国の大学で図書館学講座ないしは司書講習が開催されるようになった。青木次彦編『近畿地区図書館学科協議会の歩み』(1982年11月 同志社大学司書課程刊 15p.)によると、「そのような状況のなかで、京阪神在住の、これら図書館学教育を担当する教員の有志が図書館学教育について懇談する機会をもつこととしたのが、この近畿地区図書館学科協議会のはじまりであった。」とある。

青木氏によると、第1回の会合は1954年であった。私が出席するようになってから、これまでの協議会の会合でもしばしば話題になったのは、次のことであった。つまり事務局を固定し、正式に会長/事務局長を任命し、会則を定めて協議会案内の正式な発送を行い、同時に協議会議事録(2部宛て)の保管をきちんとするようにという要望が折あるごとに出されたことであった。いまだにこれらの案がまっとうされているとは言えないいささかの理由として、次のような事情がある。

私が青木氏より聞かされた初期の会合風景は、開講大学はごく限られていたこともあって、せいぜい数大学の担当者が集まって、ちょうどロビー談義のような、きわめて at home な雰囲気であり、機関参加か個人参加かも不明確であったようである。また、協議会は研究を主とする団体というよりも、図書館学教育についての協議・情報交換を中心とする団体としてのとらえかたがなされてきたという経緯がある。さらに開催頻度も年に一度ではなく数度にわたる複数回の開催であったということである。

それが次第に加盟の団体が多数(今年の2006年度で66大学)に及び、京阪神の各ブロック別(滋賀は京都ブロック;奈良、三重は大阪ブロックに)の持ち回りとなった。また、こちらは1970年代すでに私も経験していたが、必ずしも加盟大学、専任教員を固定せず、幅広く非常勤講師や近畿地区以外も含めて参加の枠に融通を効かせるようになった。

この融通を効かせることの効果というのは、しばしば新しい事態が生じたときに効力を発する。一つの例としては、1996年にカリキュラム改定の問題が図書館学教育/司書養成の観点から大きなトピックとして惹起した。わが国の図書館学関係者のさまざまな意見を必要としたのである。つまり、必ずしも既製の図書館学関係の研究団体に属していない、非専任の担当者の意見も幅広く拾い出すことにもなったのである。

協議会は、今年で第58回を迎える。他の協議会や研究団体とも異なるユニークな組織であり、その歴史と実績を踏まえたうえで協議会メンバーがお互いに力を合わせていきたい。つまりは、単なる形のうえでの連絡協議会ではなくて、今後とも継続して実質的な、効力のある協議会として、近畿地区のみならず全国レベルでの図書館学教育/司書養成の向上に寄与するものでありたい。

(2006年10月8日、元・同志社大学文学部教授 渡辺信一)

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